特攻隊員が愛する姉や妹に宛てた本心を綴った手紙と戦地へ赴く覚悟

特攻隊の人が愛する姉や妹に宛て本音を綴った手紙

特攻隊というのは特別攻撃隊の略で、太平洋戦争中に編成された特殊部隊。生還の見込みが通常よりも低い決死の攻撃、もしくは戦死を前提とする必死の攻撃を行う攻撃隊のこと。

太平洋戦争の暗い部分として、当時20歳そこそこの若者が国や家族を想い、尊い命を犠牲にして戦地へ飛び立った経緯があり、本音や家族に宛てた想いがつまった手紙が数多く残されています。

 

高須孝四郎・海軍一飛曹が姉に宛てた本音と覚悟

1945年(昭和20) 8/9 本州東南洋上にて戦死。亨年23歳。神風特別攻撃隊第七御盾隊第二次流星隊員

攻撃直前記す。御姉上様、合掌、最後に当たり何も言うことはありません。僕が常夏の国南米伯国より日本の国へ帰って、何も知らない僕を、よく教え導いてくださったことは、心から感謝しております。身を海軍に投じて以来未知の生活、日本の兵隊生活は最後の魂の道場でした。海軍に入営してより、日夜の訓練によって心身共に磨き清めて来ました。今、国のために散って行く私です。日本に帰るときに母様より呉々も言われた事、頼まれたことを果さずに散ってゆくのは心が残ります。最後に年老いた両親に迷惑かけたことを、深く悔やんでおります。今私は澄んだ気持ちです。白紙の心です。皆々様もお元気に。では私は只今より攻撃に行きます。再合掌

 

 

宮崎勝・海軍少尉がまだ見ぬ妹を想い綴った手紙

1945年(昭和20) 5/4 沖縄海域にて戦死。亨年19歳。三重県松阪市出身。神風特別攻撃隊第五神剣隊。

やすこちゃん。特攻隊の兄さんは知らないだろう。兄さんも、やすこちゃんは知らないよ。毎日、空襲で怖いだろう。兄さんが、敵(かたき)を討ってやるから、でかい母艦に体当たりするよ。その時は、ふみこちゃんと、轟沈轟沈を歌って、兄さんを悦ばせてよ

 

大石清・海軍伍長の唯一の肉親である妹に宛てた手紙

大阪府出身 飛行学校卒 戦死。小学生の妹(静恵)一人が残され、伯父の元に引き取られていった

静(せい)ちやん お便りありがたう。何べんも何べんも読みました。お送りしたお金、こんなに喜んでもらへるとは思ひませんでした。神だな(棚)などに供へなくてもよいから、必要なものは何でも買つて、つかつて下さい。兄ちやんの給料はうんとありますし、隊にゐるとお金を使ふこともありませんから、これからも静ちやんのサイフが空つぽにならない様、毎月送ります。では元気で、をぢさん、をばさんによろしく

なつかしい静(しい)ちやん!おわかれの時がきました。兄ちやんはいよいよ出げきします。この手紙がとどくころは、沖なはの海に散つてゐます。思ひがけない父、母の死で、幼い静ちやんを一人のこしていくのは、とてもかなしいのですが、ゆるして下さい。

兄ちやんのかたみとして静ちやんの名であずけてゐたうびん(郵便)通帳とハンコ、これは静ちやんが女学校に上がるときにつかつて下さい。時計と軍刀も送ります。これも木下のおぢさんにたのんで、売つてお金にかへなさい。兄ちやんのかたみなどより、これからの静ちやんの人生のはうが大じなのです。もうプロペラがまはつてゐます。さあ、出げきです。では兄ちやんは征きます。泣くなよ静ちやん。がんばれ!

 

田中哲郎・上飛曹の年の離れた妹に宛てた手紙

早苗ちゃん 風邪をひかないか、元気で、毎日、日参に又学校に行って居りますか。寒いから気をつけなければいけないよ。早苗ちゃんが病気になると兄さん、うんと心配しちゃうからね病気になんか成るんじゃないよ。雪が降ったことがあるかい。兄さんの居る処は時々降るよ。此処には高い高い山が有るんだよ。ホラあすこに見えるタイトウミサキの山を、二十くらい積んだ山がね。こんな高い山、早苗ちゃん見たこと有るかい。なに、有る、どこで、なあんだ、ユメでかい。・・・・そしてねこの山はずっと前から、雪の着物を着て真っ白だよ。だからずいぶん寒いよ。だけど兄さんなんか平気だよ。どうして、それはね、どんどん駆け足やったり、体操やったりするからだよ。だから早苗ちゃんもどんどん運動するんだよ。そうするとあたたかくなるし、病気なんかにもならなくなるよ。だけど、早苗ちゃんは女だから、あばれたりしちゃだめだよ。喜久ちゃんをたたいたり、おとうさんやおかあさんの言ふことはよく聞くね。それからもうひとつ幹ちゃんをよく見てやるんだよ。ずいぶん大きく成っただろうね。かはいいだろう。早苗ちゃん勉強するんだよ。もうじき三年生になるんだものね。この間、愛子ちゃんから、かはいい手紙が来たよ。早苗ちゃんも喜久ちゃんと書いて、くださいね。兄さん、待っているよ。

兄さんはね毎日元気で赤いトンボのような飛行機にのって飛んで居るよ。小さな舟や白いホを上げたホカケブネやいろんな形をした島のういた青い青い海の上や村の上町の上をブンブンとね。 では早苗ちゃん手紙を待って居るよ

 

重信隆丸・少尉が愛する妹と家族に宛てた気持ちと覚悟

妙子、全く意地悪ばかりして申訳ない兄だったね、許してくれ。愈々明日は晴の肉弾行だ。意地悪してむくれられたのは、今から思へばみんな懐かしい思い出だ。お前も楽しかった思い出として笑ってくれ。兄さんが晴の体当たりをしたと聞いて、何もしんみりするんぢゃないよ。兄さんは笑って征くんだ。おおむね人間とはだねエッヘン!大きな或るものによって動かされているのだ。小さな私達の考えも及ばない大きな力を持つ或るものだ。それは他でもないお前の朝夕礼拝する御仏様なのだ。

死ぬということはつらいと云うが「何でもない。御仏様の為されることだ」と思えば、何も問題でもなくなるのだ。欲しいと思うものが自分のものにならなかったり、別れたくないもの、例えば兄さんに別れたくなくったって、明日は兄さんはお前なんかまるで忘れでもしたかのように平気であっという間に散ってゆくのだ。そして丁度お前のような境遇の人は、今の日本は勿論世界中のどこにでも一杯なのだ。又兄さんは特攻隊に入って暫く訓練したが、兄さんの周囲では、特攻隊と関係のない長命すべきように思える人がぽつりぽつりと椿の花のように死んで行った。大体わかるだろう。

この世は「思ふがままにゆかないのが本当の姿なのだ」といふことが。簡単に云えば、一寸まずいが、無常が常道の人世ともいえよう。兎に角何も心配することなんか此の世にはないのだ。明るく朗らかに仕事に励み勉強し、立派な人間になってくれ。それがとりも直さず御国への最も本当のご奉公なのだ。兄さんはそれのみを祈りつつ征く。

難しそうなことを色々書いたが、兄さんも色々これまで考えた挙句、つひ最近、以上書いたような心境になったのだ。お前もなかなか本当の意味は分り難いと思ふが、折に触れてこんなことを考えていたらいつか分ることだ。朝夕お礼をすることを忘れないように。しみじみ有難く思ふ時が必ず来る。お父さん初めお母さん、相当年もとられたことだから、よくお手伝いをしてあげてくれ。姉さん、昭を頼む。元気に朗らかにやるんだよ!

仏様のことを時々考えろと云ったって、仏様とはしんみりしたものとは全く関係のないものだよ。以下取り急ぎ断片的に書く。一、運動は必ずやるべきだ、精神爽快となる。一、守神を頼んではあったが、手に入らなくとも何の心残りも無し 雨降れば天気悪しだ ワッハッハハ 一、よく読書すべし 幾ら書いても際限なし ではさようなら お元気で